プロローグ



 あの時、ボクはただひたすら、薄闇の中に浮かび上がる階段を登

りつづけていた。

 白い息は乱れ、素足は床の冷たさに感覚を失いかけている。けど、

そんな事なんてどうでもよかった。それ以上に、心が辛かったから

・・・もう、今にでもつぶれそうなくらいに・・・



 『苦しいよ・・・怖いよ・・・離れたくないっ・・・・・・それ

なのに・・・・・・それなのに・・・!!』



―――あの時って何? 此処はいったい何処なの!? 何故こんな

に心が苦しいの!?



 答える人なんていない・・・もう、此処にいるのはボクだけなん

だから・・・

 ただ存在するだけで、この世の全てを飲み込んでしまいそうな異

形の巨人。そして、皓く輝く剣を手に立ち向かう剣士。世界の存亡

を賭けた戦いが、もうすぐ始まる。

 でも、どちらが上かなんて、火を見るよりも明らか。人間と神、

――状況をどうこういう以前に、この無限にも近い差はどうしよう

も無いんだ。でも、ボクにはそれが言えなかった。その事を口にし

たら・・・そうしたら、もう、本当に二度と優佳が帰って来なくな

るような気がしたから。



―――えっ!? 今、何て・・・



 さっき手渡した風の精霊石が、きっと力を貸してくれる。例え、

何が起こっても、ボクの半身が代わりに見守っていてくれる。それ

に、何よりも、「必ず生きて帰ってくる」って、ボクを一人ぼっち

にはしないって、そう約束してくれた。

 だから、ボクはこうしてキミを信じてる。必ず、ボクのもとに帰

ってきてくれるって・・・



―――・・・から・・・・だから、その人って誰!? もぅ、無視

したら承知しないよっ!



 ・・・・・・。うるさいなぁ・・・これ以上考えたくないのよ!

姿も、声も、ただ想像しただけで、胸が痛くて、苦しくって、張り

裂けそうになるのっ!もう話し掛けないでっ!!



―――『さっきよりも遥かに鮮明になって、あの光景が浮かび上が

ってくる・・・。・・・・・・・・・、!! ボクは、この人を、

・・・知ってる・・・・・・?』



次の瞬間、強烈な衝撃がボクの意識を吹き飛ばした。




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