第五章「輝く風の訪れ」 前文




 すべてが白く包まれていく。白い結晶の降りしきる世界。そこは、ボクにとって特別な

場所だった。どうしようもないくらいに好きになってしまった人と、逢瀬を重ねた庭園。

幾千の灯火と華やかさに包まれながら、誰よりも好きな人と踊った舞踏会の、最後の夜。

その果てに、まさかこんな結末が待ち受けていたなんて!!


 瓦礫すらも残さずに消し飛んだ廃墟の中を、どれほど歩いたのだろう。声が枯れるまで

キミの名を呼び続けて、涙が出なくなってしまうまでこの胸を痛め続けて、身体がボクの

言うことを聞かなくなっても、それでもボクは、キミを探し続けずにはいられないんだ。



キミの声を聴きたい。

キミの姿を見つけたい。

キミの温もりにもっと接していたい。

キミに、もっとボクのことを知ってほしい。

これからだって、ずっとボクと一緒にいて、傍で見つめていてほしい。



キミは、言ってくれたよね。ボクを、一人ぼっちにはしないって。ボクを突き放した時も、

本当はボクのことが好きだったんだよね。それを知っていたはずなのに、ボクは最後まで

自分の思いを終わらせることができなくて、キミにまで、つらい思いをさせちゃった――


でも・・・たとえ、そうだと分かっていても、ボクはキミを許せないんだ。



 ひどいよ・・・ボクの心の中に入り込んで、どうしようもないほど好きにしてしまって、

最後の最後まで優しくして、それなのにボクのことを振ってしまって・・・それなのに、

ボクのことを助けにきてくれて―――ボクの心を奪っておいて、勝手にこの世界の彼方に

行ってしまうなんて、いくらなんでも酷すぎるよっ!!!



駄目だよ・・・ボクはもう、キミがいなかったら駄目なんだよ・・・

お願いだから・・・。他には何も望まないから・・・

だから・・・・・、だから・・・・・・・・




『帰って来てよーーーーーーっ!!!!』





声にならない絶叫だけが、夜の静寂を震わせる。





『せめて、もう一度だけでも良いから出会って、本当の気持ちを聞きたかったな・・・』





既に、身体の芯まで感覚が無くなってきている。

白い世界の中で、次第に白く染まっていく意識。

これが全てを覆いつくしたら、ボクもキミのところに行けるんだね・・・そうなったら、

きっとキミに、ボクの思いを伝えるから・・・・




――ボクの全てが白い風に奪われていった最後の時、遠くから呼ぶひとつの声を感じた。