4月28日 晴れ
さて、再び我々の冒険の日々(?)を書く機会を得たわけだが、それまでに1つだけ
断っておく事がある。前回に登場したアヤは今回は全く現れない。魔導士ギルドの召
集を受けて何かの研究の助手をする事になったのだ。そのかわりに2人が新たに加わ
って、6人で行動する事になった。
その2人を紹介しよう。まずは人間の戦士兼盗賊であるエトワール。どういうわけ
か、この名を聞いた途端に吐き気を催してしまった。何故そうなったかは今でも分か
らない。もう1人はクリフというハーフエルフの魔導師である。メイジスタッフ片手
に謎の微笑を浮かべる、なかなか怪しいやつである。まあ、このパーティーはもとも
と尋常じゃない人達の集まりなのでいまさらどうって事もないのだが。
今回の仕事は、洞窟で迷っていると思われる4人組の救出である。近郊の村の若者
なのだが、ちょっとした事で調子に乗って、装備もろくに持たずに村を飛び出したそ
うだ。ほっといたらまず助かるまい。
その村は竹が特産物であり、定期的に荷馬車が通っている。それで村まで移動する
事になった。クリフは報酬とは別に筍が手に入ると楽しみにしていた。昼には村に着
いたのだが、今から行くと途中で野宿する事になるので、ここで一泊してから夜明け
とともに出発する。
4月29日 くもり
早速、我々は夜明けとともに出発した。周辺は竹薮で、風と一緒にさわさわという
音がしてなかなか気持ちがいい。筍も結構見かけたが、クリフは村の人からもらうと
いって、掘ろうとはしなかった。怪しさとは裏腹に、なかなか律儀である。そしてい
よいよ竹薮を抜けようとした時、エトワールが急に立ち止まってみんなを制した。さ
っきからの、音の中にかすかに混じっている、ざわざわという音を感じ取ったのだ。
振り向くと、巨大な蛇が背後に迫りつつある。そして、この瞬間に初めて我々の心は
一つになった。“昼食はこいつだ”
アレンが矢を射かけたがことごとく鱗に弾かれしまった。蛇はにょろにょろという
どころか、ずぉぉんと質感を持って迫ってくる。やっかいだなと思いつつも、応援の
踊りをするために旗を取りだそうという時に、キッコーマンが叫んだ。
「さっさとシェイドで沈めるんだ!」
「精神力を温存しときたいんだけど........」
「いいから撃て!すぐに撃て!」
「でもやはり................」
などと言ってる間にも戦闘は続いている。ついに前に出ているフレイが締めつけら
れてしまった。こうなったらやるしかない。彼が振り解いては締められるという行為
を繰り返している間に、シェイドを2発撃って気絶させた。最近ホールドとこれしか
使ってないような気がする。
ちょっと昼食には早かったが、解体して火であぶっておく。血をぐっと飲んで見た。
結構効いたかもしれない。いきなりこんなのが出てくるとは予想外だった。これから
何が出るんだろうか。
日がだいぶ傾いてきたところで、洞窟の前にたどり着いた。しかし休んでいる時間
はない。すぐに中に入って足跡を捜す。外からでは分からなかったが、かなり人の手
が加わっている。自然の洞窟の中にさらにトンネルを掘り、壁や床もある程度平らに
なっている。クリフの話によると「地方の大魔王」とかいうのがよくこんな所を住み
かにして、悪役の演技に浸っているのだそうだ。まだまだ人間には謎が多い。
取りあえず入口から見える範囲の足跡を調べて見たのだが、残っている足跡はすべ
て同一人物の物だった。ここにいる可能性は低くなったが、完全に調べなくてはまだ
言い切れない。右の通路に入って........................いきなり岩壁が開いて刃
が飛び出してきた。フレイが直撃を受けたが、かろうじて鎧で止まったいた。
結構物騒な所である。さらに通路は狭くなっていったが、すぐに広い部屋に通じて
いた。そこには誰かが1人倒れていて、その上を巨大なむかでが這っている。ううっ
..........やな光景だ、そもそもむかでは苦手なのだ。あれはさすがに食べられない。
あんな物を食べるのは蛙や、その辺の鳥ぐらいである。精霊力は正常で、敵はあのむ
かで1匹だけである。フレイはまだ不幸を引きずっていた。むかでは彼の斬撃をひょ
いとかわすくせに、その直後にアレンのすっぽ抜けた矢を受けたりするのだ。エトワ
ールがとどめを刺した。
その後倒れている男を調べてみたが、魔導師で目的の人物ではなさそうだ。足跡か
らも、ここの住人だろう。結構むかでに食われてたりする。すぷらったである。しか
しどうしてこの部屋にいたのだろうか?
今度は左に行ってみる、緩やかな下り道がえんえんと続く、パターンでは下り切っ
た所に..........となる訳だが我々は奥に扉があるのを確認した。半開きで中は暗闇
だ、気温も下がっている。アレンが忍び足で行ってみるが中がよく分からない。夜目
が効くキッコーマンも続いて覗いてみる。ブロックサインが飛んだ。“モケモケがい
る”
モケモケって何だ?聞いた事もない。ひょっとしたら凄い奴なのだろうか。エトワ
ールも鎧を脱いで行ってみる........................結局ほぼ全員が前に出て来た
のだった。
たいまつを放り込むと、中にいるのは巨大なありだと分かった。今日は何かと巨大
物が多い。単なる貯蔵庫で、通路も見た限りじゃなさそうだ。問答無用で扉を閉めた。
引き返して、さらに奥へ行ってみる。部屋はさらに2つあったが、1つは単なる居
住空間。もう1つは初めての鍵のかかった部屋だった。これは何かあるかも。たいま
つに照らされたクリフの笑みが一層深くなる。
そこには古代語の本や巻物がたくさん置かれていた。私には何が書いてあるか分か
らなかったが、どうせクリフ以外は誰も読めないのだ。しばらく部屋を漁っていたが、
彼の話によるとたいした物はないらしい。「1か月で分かる上位語」「世界の秘湯」
「高速立体シミュレーション取扱説明書」などの訳の分からない書物が集まっている。
しかし、片隅に何かが入った木の箱があった。これは収穫である、開いたらの話だが。
開かないのだ。アレンがいじっても、クリフが魔法をかけても、キッコーマンがやけ
になって壁にたたきつけても開かなかった。これはもって帰る事にする。結局1人も
見つからなかった。
日はとっくに暮れていて、ここで泊まる事になった。クリフは「世界の秘湯」を懐
にいれてとても大事にしていた。
4月30日 晴れ
かくして、我々は村に戻って村長に事の次第を話していると、村に4人組が入って
来た。粗末でいかにもその辺で調達したといった装備をしている。最初は洞窟を目指
したのだが、迷った末に結局は村で竹細工をして暮らす方がいいと思い直して帰って
来たのだ。それでも報酬はもらえてよかった。この分は彼らが泣きながら稼ぐ事にな
るだろう。まずは一件落着である。
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